Sunday, November 2, 2008

消えたカルカッタとベートーヴェン

さらにカタカナ表記問題の続き。(3)

結論: オランダ語のVのカタカナ表記は、「フ」ではなく「ヴ」だ。
オランダ語とは関係ないけど、インドの「カルカッタ」も、今では「コルカタ」(Kolkata, কলকাতা)に変わっていた。家にある2000年発行の世界地図帳では「カルカッタ」がまだ存在している。

日本では、いつの間にか新聞やNHKなど権威のある人や団体が勝手に新しい表記を作って、それを突然変更して定着させている。オランダ語のVを「フ」と表記するのも同様だ。正確には「ヴ」であるべきなのに。
この件に関して、ドイツ語ご専門の先生からご教示のメールを頂いた。(以下引用)
「問題の件、最近、日本では、殊にテレビの影響で、発音が変わって来ているように見受けます。それが、必ずしも正しくはないので、ジャーナリズムと学界は別、と割り切る必要があるでしょうね。仰るとおり、オランダ語の 'v' の発音は [v] です。カタカナ表記すれば[ブ]、より適切には[ヴ]です。」・・やっと納得できた。

Vermeerの発音に関しては 、「発音辞典(ドイツ語版)は明瞭に[オランダ語ではヴェルメールとされているそうだ。
さらに、Beethoven「ベートーヴェン」は、ドイツ語読みで「ベート・ホーフェン」(正式)、あるいは「ベートーフェン」。でも、彼の名前はオランダ語系なので、原語風に「べートーヴェン」が正しいとのこと(詳しくはこちら)。勉強になりました。

改めてしっかりとオランダ語辞書と語学参考書を調べると、オランダ語のvの発音記号はどれも[v]で、説明には「フランス語のvと同じ発音」とある。そうすると、やはりv のカタカナ表記は「ヴ」が発音に近いといえる。
しかし例外として、「t, k, f,s, ch, p, g, b,dの後に来る場合の発音は[f]に変わるともあるVincent van Goghの場合、「ヴィンセント・ファン・ホーフ」と聞こえるのは合っていたことになる。つまり、名字だけ読む場合は「ヴァン・・・」で、姓名では「ヴィンセント・ファン・・・」の発音になるらしい。
改めてまとめ: オランダ語のvをカタカナ表記にすると「ヴ」が近い。(それが時には「フ」のように聞こえることがある。)
「フランデレン」や「フラームス・ベラング」は一般に知られていないし「フェルメール」ほど定着していないので、「フ」は「ヴ」または「ブ」の表記どちらでもよさそう。
論文や新聞・テレビでは、vを「フ」にする傾向がある(外務省や観光局なども)。オランダ語のv は 「ヴ」または「ブ」にしても大丈夫
・・
ベルギー北部(オランダ語圏)のヴラーンデレン(Vlaanderen)・フランデレンには、フランス語由来の呼び名「フラマン語」(flamand)や「フランドル地方」(Flandre)もある。英語のフランダースも有名だし、どれでもいいと思う。
カタカナ表記変更といえば、最近ではマイクロソフト社が、「コンピュータ」を「コンピューター」、「ブラウザ」を「ブラウザー」に・・・など、長音カタカナ表記を変更したばかりだ(マイクロソフト社プレス・リリースによる)。説明→ PC Watch

5 comments:

Unknown said...

ぱりっと「結論」出していただいて有難いです!!なんか基準があるとやりやすいですよね~と、あらためて。

ただ、「ヴラーンデレン」について、ちょっとだけ異議(笑)

やっぱり、フラーンデレン(←僕はこういこうかな~と思ってるんですけど)では、vが(とりわけ語頭において)無声化する傾向があるって報告が相変わらず気になってまして…

・Deprez, Kas (1987) 'Le néerlandais en Belgique', in Jacques Maurais (dir.) Politique et aménagement linguistiques, p. 97.

・石川光庸・河崎靖訳(1999)『オランダ語誌:小さな国の大きな言語への旅』、21頁

この傾向が(程度は強弱はあれ)ある程度北と南の「オランダ語」を分ける特徴であるならば、ベルギーの地域・制度名をオランダの「規範」で表記するってのにはなんとなく違和を感じるんですけど…いかがでしょう。。。

Unknown said...

あっ、「フラマン」、「フランドル」、「フランダース」、「フレミッシュ」はあしき慣習として消え去ってくれることには望んでます!

…といってしまったのものの、これもまた微妙で、「フランドル」なんかはかつて現在のベルギー全域をその意味に含んでいた時代もあったようで、こうなるとこのフランス語(的)な「フランドル」も必要となることも記述する時代によってはあるのかも…「フランデレン学派」なんかも…。

ということで、結論:僕には分からない!

よしちこ said...

naoto19さま、コメント有り難うございます!
あれ、この間の説と逆ですか?^^
オランダ:v[v]、ベルギー:v[f] …ということ?

「ヴラームス」と「ヴランデレン」は相当悩みました。
結論の根拠は以下の通り。

・どの辞書でもvの発音記号は[v]とされている。
・ベルギー人の母語話者に何度も実際に発音してもらい、やはり(「フ」に近い)「ヴ」に聞こえた。
・ベルギー・オランダ語圏で日本語を学ぶ場合、
vは「ヴ」にするという規則がある。
・日本語のできるオランダ語母語のベルギー人から
「フ」ではなく「ヴ」だと確認。

「特に語頭で無声化する」というのは発音の話で、
表記とは別の問題ではないでしょうか?
例えば英語のofの[v]が弱く[f]のように発音された場合でも、「オフ」とは表記しない気がします。

カタカナ表記を「聞こえた通りに」するなら、もはや統一はできなくなりますね。そうするとゴッホも「ヴィンセント・ファン・ホーフ」だし(笑)。
調べましたが、ベルギーのオランダ語の発音記号の場合、vは[f]だ!と明確に規定した記述は見つけられなかったです。
発音する時に「無声化する傾向」がある(「フ」に聞こえる)けれど、発音としては[v](ヴ)では?
「フランデレン」は、「フェルメール」や「ゴッホ」のように
ある程度定着した「日本語」になっている気がします。
いかがでしょう?(笑)

「フランドル」の件は同感です。
同じことを考えてました。かつてフランス語が支配していた地域の話をする場合には、当時の呼び名としてフランス語読みでもいいと思いました。(^^;)細かい話ですよね。

Unknown said...

ほんまですね!逆ですね!!

うん?
河崎さんの方が、ベルギーのオランダ語[v]説で
Deprezさんの方が、vが無声化

混乱してました…頭の中できちんと理解してないことを言うとこうなりますね~(笑)
反省です、ご迷惑をおかけしましたm(__)m

よしちこ said...

naoto19さま。
いえいえ、とんでもありません。貴重なコメントを頂き、有り難うございます。
そうなんですか~。2つの論文は逆の論を展開しているのですね。

つまりこうでしょうか?

音声表記では、オランダ語/v/の発音は[v](「ヴ」)。
ベルギー蘭語圏では、無声化され[f](「フ」)のように発音される傾向もある。

でも、実際のベルギー人母語話者は「ヴ」と発音していたので、「フ」のように発音する方言もあるということでしょうか?

また新たな発見があれば、ご教示お願いします。