Tuesday, August 25, 2009

オランダ語の/v/

アール・ヌーヴォーの続きで、アルフォンス・ミュシャ(1986年作)。

オランダと日本の通商400周年記念で、秋篠宮ご夫妻がオランダに公式ご訪問中。
1609年から続く日本とオランダとの関係は古くて深いけれど、オランダ語は日本人にとって馴染みがないことば。

久しぶりにオランダ語の発音問題(しつこい…)。
(参考)過去のシリーズ→
オランダ語カタカナ表記問題

オランダ語を学んで分かったのは発音が超難しいこと。・・・カタカナで書くのは無理。
/v/を無理にカタカナにすれば、、「ヴ」と「フ」の両方の発音がある。
明確に「ヴ」の時もあるし、「フ」といっても「ヴ」が弱~くなって「フ」に近く聞こえるという感じ。日本語の「フ」ではなく、「フ」に近い「ヴ」みたいな。

結論は、やっぱり
カタカナ表記としては基本的に「ヴ」がいいと思うけれど、「ヴァンゴッホ」か「ファンゴッホ」かどちらが好きかみたいなもので、まぁどちらでもいいと思う。

グリムさまがコメントをくださいました。ありがとうございます。
ゴッホの表記について
最近の流れは江戸時代の表記なのかな??

12 comments:

グリム said...

ロシア語の/v/の音は「モスクワ(Moskva)」「ウォッカ(vodka)」のように「ワ」とか「ウ」に転写されることがありますが、これは英仏伊語などの/v/より摩擦が弱いからだといわれています。最近本で見たんですが、ドイツ語の"w"/v/も摩擦が比較的弱いみたいです。ドイツ語からの外来語でも「ワッペン(Wappen)」「ワクチン(Vakzin)」「ウィーン(Wien)」のようにワ行で書くことも多いですね。オランダ語話者にとってドイツ語の"w"/v/はオランダ語の"w"と同じように聞こえるんじゃないかしら。ドイツ語でも人によっては"w"を英語の/w/に近く聞こえるように発音することもあるそうです。

同じ/v/という音素でも言語によって発音にぶれがあり、カタカナ語にもいくつかのヴァリエーションがあります。オランダ語の/v/の特徴は、無声化する場合もあることと、/f/よりは摩擦の息が弱いということがいえるでしょう。

よしちこ said...

グリムさま、コメント有難うございます。

言語によって発音に特徴があるのですね。
そういえばロシア語にはあまり注意を払っていませんでしたが、この例は日本語で馴染みのある単語ですね。

ところで、グリムさんの結論としては、
オランダ語の[v]をカタカナ表記する場合
「ヴ」「ブ」「フ」どれがお好みですか?

地域差、個人差、文中の単語の位置などを考えるとひとつの表記が絶対とは言えないのは承知していますが…。

グリム said...

文中の単語の位置で言えば、特に語中で有声音に挟まれている場合は「ヴ」に聞こえることが多いので、そういう時は(発音記号でも[v]だし)「ヴ」(「ブ」で置き換えてもよい)で書いたほうがいいと思います。たとえば「Van Houten」は「バン・ホーテン」のままでいいと思います。フェルメールなど歴史上の人物は、慣用に従っていればいいと思います。

昭文社の世界地図ではオランダ南部のVlissingenはヴリシンゲン、北部のVlielandはフリーラントと表記されていますが、地域差を考慮したものだと思います。

よしちこ said...

グリムさま。コメント有難うございます。

私も、地域差と個人差があるし、どちらでもいいと思います。
実際の発音を何度も確認し、さらにオランダ語の勉強も始めたところ、[v]は、「ヴ」になることも「フ」のような発音になることもあると分かりました。

昭文社の世界地図では両方の表記を使っているのですね。おもしろいです。

「フェルメール」の表記の件も賛成です。日本名だからこれでいいかと。(「ヴァン・ゴッホ」が「ファン・ゴッホ」になったのは不思議でしたが)

グリム said...

昭文社では「ヴリシンゲン」でしたが、グーグルアースの方では「フリッシンゲン」と表記されていて、「ヴリシンゲン」で検索したらエラーが出ました。

よしちこ said...

グリムさま、なるほど。有難うございます。
試しにグーグルで検索してみたところ、「ヴリシンゲン」の方が多くヒットしました。「表記ゆれ」ということで、どっちでも出るのかもしれないです。

グリム said...

よしちこさま、あけましておめでとうございます。

最近新聞でスリナムの記事を見ました。スリナムの「フェネティアーン大統領」という名前を見て、すぐに、これはおそらく「ヴェネツィア」が語源だろうと直感しました。スペルは「Venetiaan」です。スリナムは南米のオランダ語の国ですが、やはりVは「フ」と表記するんですね。

ちなみにスリナムは世界地図の各国要覧で、「言語」の欄にはだいたいオランダ語、スリナム語、英語、そしてかっこ付でヒンディー語、インドネシア語、中国語とあります。多民族国家でアジアからの移民も多いです。でも公用語はオランダ語のみみたいです。

よしちこ said...

グリムさま、明けましておめでとうございます。
参考になるお知らせをありがとうございます。オランダ語の[v]は「フ」と「ヴ」(ブ)の表記がありますね。新聞には「ヴ」が使えないので「ブ」より濁らない「フ」の方が好まれるのでしょうか。
スリナムの場合はあまり注目していませんでした。有難うございます。

グリム said...

そうですね、新聞では三面記事やスポーツ記事では「ヴ」を使いません。なので海外の政治家の名前に「ヴ」が使われることはありません。一方社会面や経済面では個人名や海外の企業名、地名などに「ヴ」を使うことがよくあります。

学問分野は文系科目では「ヴ」をよく使うのに対し、理系科目では「ヴ」を使わず、また化学では「ティ」は「チ」、「ディ」は「ジ」にしばしば置き換えられます。前者は外国文化を肌で感じることが望ましく、後者は日本語として消化することが望ましいからでしょうか。

よしちこ said...

なるほど、そういえば「ルイ・ヴィトン」は「ビトン」となっているのを見たことがないですね。

いろいろと興味深いコメントを頂き、いつもありがとうございます。

グリム said...

ドイツの Hanover はカタカナで「ハノーヴァー/ハノーバー」と書くことも「ハノーファー」と書くこともありますね。ドイツ語辞典で発音を調べたら「ハノーファー」と「ハノーヴァー」両方がありました。ドイツ語では v は/f/(外来語を除く)、オランダ語では v は/v/と発音し/f/と区別するのが正式とされていますね。

Hanover の場合現地が低地ドイツ語の方言圏(ドイツ語辞典の付録の方言地図では、オランダ語圏も含まれる)なので、オランダ語のように fとv を区別して、標準ドイツ語では「ハノーファー」でも現地ではよく「ハノーヴァー」と発音するんじゃないかしら。

よしちこ said...

グリムさま
コメントありがとうございます。

オランダ語のVは、オランダのオランダ語とベルギーのオランダ語の間でも発音が違って、カタカナ表記もいろいろで、ややこしいですね。

なるほど、ドイツ語の場合も参考になります。結局表記ゆれがあるのですね。